
高所得ほど効くiDeCo、共働き世帯の節税インパクト
この記事の要点
- iDeCoの掛金は全額が所得控除。だから所得税・住民税の限界税率が高い人ほど、同じ掛金でも手元に戻る額が大きい。年収帯で効きが露骨に変わる制度です。
- 共働きは税率の高い側から厚く掛けるのが先。どちらに寄せるかで世帯の戻りが年数万円、生涯で百万円単位変わります。
- 本当の勝負は入口ではなく出口(受け取り時)。退職金と一時金を同じ年にぶつけると、入口で得した分を出口で持っていかれます。
- 退職金が手厚い大企業勤務ほど「全額一時金」は地雷。年金受取や受け取り年の分散で逃がします。
- 数値は2024〜2025年時点の一般論。最新は公式情報・専門家へ。
本当の勝負は入口ではなく出口(受け取り時)。退職金と一時金を同じ年にぶつけると、入口で得した分を出口で持っていかれます。
なぜ年収が高いほど効くのか
iDeCoの節税は、払った掛金がその年の所得から丸ごと引かれる(小規模企業共済等掛金控除)、ここに尽きます。所得が減れば所得税と住民税が減る。仕組みはそれだけです。
効きの差を生むのは累進課税です。日本の所得税は、課税所得が積み上がるほど一番上の部分に高い税率がかかる。控除で削れるのは、まさにその「一番高い税率がのっている上澄み」の部分です。だから課税所得900万円超で限界税率33%の人と、330万円どまりで20%の人とでは、同じ掛金を入れても戻り方がまるで違う。高所得ほど効く、というのは精神論ではなく、削る場所の税率が高いという算数の話です。
住民税はおおむね一律10%。なので戻りの目安は「所得税率+約10%」でざっくり掴めます。次で金額に落とします。
※掛金上限・税率・家族構成・他の控除で大きく変動します。実額はシミュレーションでご確認ください。
税率別、戻ってくる額のイメージ
年間掛金を27.6万円(月2.3万円)とします。企業年金のない会社員の上限に近く、共働きなら片方が出すには現実的な額です。あてはめる起点は源泉徴収票の「課税される所得金額」。年収ではなく、ここを見てください。
| 課税所得の目安 | 所得税率 | 所得税+住民税の概算 | 掛金27.6万円での軽減額(概算) |
|---|---|---|---|
| 195万〜330万円 | 10% | 約20% | 約5.5万円 |
| 330万〜695万円 | 20% | 約30% | 約8.3万円 |
| 695万〜900万円 | 23% | 約33% | 約9.1万円 |
| 900万〜1,800万円 | 33% | 約43% | 約11.9万円 |
20%の人と33%の人で、1年あたり3.6万円ほどの差。たった3.6万円と侮らないでください。これは毎年です。20年で約72万円、30年なら100万円を超える。年収が上の側に寄せるだけで、世帯の生涯手取りがそれだけ動きます。共働きでこの選択を雑にやる手はありません。
表は復興特別所得税を含まないおおまかな概算です。実際の軽減額は他の控除や所得状況で変わります。最新の税率・控除額は公式情報や税理士にご確認を。
共働きは「どちらに寄せるか」で先に決まる
iDeCoは加入者本人の所得からしか引けません。夫婦で合算はできない。だから最初の論点は一つ、世帯のどちらの控除として使うかです。判断は迷うほどのものではありません。
- 税率の高い側を先に、上限近くまで。同じ1円でも、限界税率33%の側が出せば33%+住民税が戻る。20%の側に入れるのは、もったいない使い方です。
- 育休などで年収が落ちている年の側に入れても、ほぼ効かない。所得税がそもそもかかっていなければ所得控除のうまみは出ません。ここは正直に。非課税側に掛けるのは節税ではなく、ただの拠出です。
- 枠は人ごとに別。会社員・公務員・自営業で上限が違い、二人加入すれば非課税枠を二人分使えます。
順番はこうです。まず税率の高い側を上限近くまで。家計に余力が残って初めて、もう一方を無理のない額で。逆に「とりあえず夫婦半々」は税率の差を捨てているので、おすすめしません。ただしiDeCoは原則60歳まで引き出せない。教育費と住宅費のピークを踏んで、当面手をつけないお金の範囲に収めること。ここだけは外さないでください。
見落とすと損をする「出口」の話
掛金の控除ばかりが語られますが、世帯で差がつくのは受け取り時=出口です。iDeCoは受け取るときに課税される。出口を設計せずに60歳まで走ると、入口で20年かけて得した分を、受け取りの1年で取り戻されることが普通に起きます。
受け取り方は3つ。
- 一時金で一括。「退職所得」扱いで退職所得控除が使えます。加入年数が長いほど控除枠が大きく、税の優遇も厚い。
- 年金で分割。「雑所得」扱いで公的年金等控除の対象。ただし受け取り期間中の他の年金収入と合算される点に注意。
- 併用。一部を一時金、残りを年金。両方の控除枠を取りにいける場合があります。
一番の地雷は、会社の退職金とiDeCoの一時金を同じ年・近い時期にぶつけることです。退職所得控除は無制限ではない。二つを同時に一時金で受け取れば枠を食いつぶし、はみ出した分にまるごと課税されます。退職金が2,000万、3,000万と出る大企業勤務の方ほど、ここで一気に効きが消えます。退職金が手厚い人ほど「全額一時金」を疑ってください。
出口戦略の組み立て方(手順)
難しく考えなくて大丈夫。この順で潰せば判断できます。
- 会社の退職金の見込み額と受け取り時期を確認する。就業規則か人事に聞けば概算は出ます。出口設計の土台はこれ。ここが空欄のまま受け取り方を決めるのが一番危ない。
- 退職所得控除の枠に余りがあるか見る。退職金だけで枠を使い切りそうなら、iDeCoは年金受取に回すか、受け取り年をずらす検討に入ります。
- 受け取り年をずらせるか確認する。退職金とiDeCo一時金の年を分ければ、それぞれの控除を活かせる場合がある。時期の重なりには一定のルールがあるので、必ずその時点の最新で確認を。
- 年金受取は他収入との合算で考える。公的年金と重なる時期は雑所得が膨らみやすい。分割年数や開始時期で散らします。
- 50代で一度、専門家と棚卸しする。出口は60歳前後の制度とその時の収入に左右されます。受け取りが近づいたら、その時点のルールで組み直すのが安全です。
結論。退職金が多い人ほど、年金受取・併用・時期の分散が効く。決め打ちで全額一時金にしないこと。逆に退職金が少ない、あるいは無い自営業の方は、退職所得控除の枠を一時金でまるごと活かしやすい。出口の正解は、退職金の額で真逆に振れます。

まず何から始めるか
情報が多すぎて動けない人は、この3つだけで十分に始められます。
- 自分と配偶者の課税所得・税率を確認する。源泉徴収票の「課税される所得金額」が出発点。これで戻りの規模感が掴めます。
- 税率の高い側から、無理のない額で始める。上限いっぱいである必要はない。家計の余力と「60歳まで出せない」制約だけ守れば十分です。
- 出口は加入時にざっくり方向だけ持つ。「いつか考える」で放置すると退職金とぶつかる。退職金の有無で戦略が変わる、それだけ頭の隅に置いておけば足ります。
iDeCoは高所得の共働きと相性のいい制度です。ただし入口の還付額だけで満足しないこと。出口まで含めた「世帯の手取り」で見る。これができるかどうかで、せっかくの節税を取りこぼすか、取り切るかが分かれます。家計全体での優先順位や他制度との兼ね合いまで整理したい方は、無料診断で現状を可視化するところから始めても損はありません。
本記事は2024〜2025年時点の一般的な制度に基づく情報で、税務・投資の個別判断に代わるものではありません。掛金上限・税率・控除額・受け取り時の取り扱いは改正で変わります。実際の手続きや判断は、必ず公式情報および税理士・専門家にご確認ください。
出口で損しないための確認リスト
- 源泉徴収票の「課税される所得金額」で夫婦それぞれの税率を確認する
- 税率の高い側から、無理のない額で上限近くまで掛ける
- 会社の退職金の見込み額と受け取り時期を就業規則か人事で確認する
- 退職金とiDeCo一時金を同じ年にぶつけないか、受け取り年をずらせるか確認する
- 60歳まで引き出せない制約を踏まえ、当面手をつけない範囲に収める
- 50代で一度、その時点のルールで専門家と出口を棚卸しする
よくある質問
iDeCoはなぜ高所得者ほど節税効果が大きいのですか
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、節税額は本人の所得税・住民税の税率に応じて決まります。所得税は累進課税のため、課税所得が高い方ほど適用税率が高く、同じ掛金でも軽減される税額は大きくなります。具体的な税率や試算は最新の公式情報や専門家にご確認ください。
共働き世帯は夫婦それぞれiDeCoに加入したほうがよいのでしょうか
一般に、所得控除は加入者本人の課税所得から差し引かれるため、夫婦双方が収入を得ている共働き世帯では、それぞれが加入することで世帯全体の節税余地が広がりやすいと考えられます。掛金の上限は職業や勤務先の制度により異なり、最新の限度額は公式情報や専門家にご確認ください。
iDeCoの掛金の上限はどのように決まりますか
掛金の拠出限度額は、会社員・公務員・自営業など加入区分や、勤務先の企業年金制度の有無によって定められています。制度改正で変わることがあるため、ご自身の区分に応じた最新の上限額は、国民年金基金連合会などの公式情報や専門家にご確認いただくのが確実です。
節税になる一方で、iDeCoに注意すべき点はありますか
iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出せず、運用商品によっては元本割れの可能性もあります。また受取時には課税の取り扱いがあり、口座管理手数料も発生します。拠出時の節税効果だけでなく、流動性や受取方法を含めた総合的な判断が望ましく、詳細は専門家にご相談ください。
文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)