介護・ダブルケアのイメージ

介護・ダブルケア

夫の親・妻の親、どちらの介護も来るときの夫婦の備え

この記事の要点

  • 双方の親の介護は「誰がやるか」より「どう仕組みで回すか」。片方に偏った瞬間に家庭そのものが揺れる。
  • 費用は「親のお金で親の介護を」が大原則。子世帯の家計とは完全に分け、立て替えは一円残らず記録する。
  • 優先順位は感情でなく緊急度で決める。四人の親を一枚の表で棚卸しし、初動を先に握っておく。
  • 共働きの武器は時間ではなく金。辞める・休むより、外注を基本線に置く。離職の損失は介護費より重い。
  • 税・介護・医療・後見は2024〜2025年時点の一般的な内容。要件は改正で変わるため、最新は公式情報や専門家へ。
費用は「親のお金で親の介護を」が大原則。子世帯の家計とは完全に分け、立て替えは一円残らず記録する。

「同時に来る」前提で組む

夫の父母、妻の父母。四人の親が、だいたい同じ十年に高齢期へ入っていく。一人ずつ順番に片づく、というのは願望だ。現実は「夫の父が肺炎で入院した翌月に、妻の母が風呂場で転んで大腿骨を折る」。こういう重なり方をする。共働きで、子どもの受験や独立もまだ片づいていない五十代にとって、これは時間・金・気力が一斉に削られる局面になる。

だから備えの出発点を「いざとなったら頑張る」に置いてはいけない。頑張りで乗り切ろうとすると、負担はたいてい片方——多くは妻——に寄る。そして寄せられた人が倒れた瞬間、全部が崩れる。目指すのは、誰か一人の踏ん張りに依存しない仕組みだ。具体的には四つ。役割の合意、費用のルール、優先順位の基準、情報の共有。まだ余裕のある今のうちに、ここを決めておく。

介護が始まった最初の1週間でやること
最初の1週間で踏む5つのステップあわてず、上流の窓口から順に。連絡先を押さえる主治医・親族・お金の在り処地域包括に相談高齢者の総合相談窓口へ要介護認定を申請市区町村の窓口で手続きケアマネ/サービス選定ケアプランを一緒に作るお金と仕事の段取り介護休業・費用の見通し

※自治体・容体により手順や窓口名は異なります。まずはお住まいの地域包括支援センターへ。

役割は「実働」と「金」を分けて握る

夫婦で一番もめるのが「自分の親は自分が見るべき」という暗黙の線引きだ。一見フェアに見えて、これは早晩破綻する。介護は平日の昼に発生する。在宅勤務か出社か、勤務地が近いか遠いか、きょうだいがいるかいないか——動ける度合いは人によってまるで違う。「自分の親は自分で」を貫けば、動けない側の親が放置され、動ける側だけがすり減る。

現実的なのは、役割を「実働」と「マネジメント・金」に割ることだ。たとえば在宅が多い側がケアマネとの窓口と通院の段取りを持ち、もう片方が費用管理と役所の書類を引き受ける。担当する親が誰であっても、夫婦は「一つのチーム」として動く。この感覚を先に握っておくと、後の衝突は目に見えて減る。

もう一つ、早めに確認したいのが互いのきょうだいだ。夫にも妻にも兄弟姉妹がいるなら、四人の親に対して動ける手は夫婦二人だけではない。「誰が何を」をきょうだい間で先に話しておくこと自体が、夫婦の負担を直接軽くする。実家の近くに住む弟、金は出せるが動けない姉——手札を把握しておくだけで初動が変わる。

費用は「親のお金で親の介護を」

費用の鉄則は一つ。親の介護費用は、できる限り親自身の資産と年金でまかなう。子世帯が肩代わりを始めた瞬間に、自分たちの老後資金や教育費が削られていく。四人分が重なれば、家計はあっという間に立ち行かなくなる。「親が元気なうちに金の話なんて」とためらう気持ちは自然だが、ここを避けた家ほど、後で一番苦しむ。

家計の混在を防ぐために、次の三つを徹底したい。

  • 口座を分ける。介護関連の支出は親本人の口座から出す。子が立て替えるときも、専用の管理表に日付・項目・金額を残す。
  • 立て替えは必ず記録する。後で精算するときも、相続できょうだい間の不公平感を避けるときも、記録が自分を守る。領収書は箱一つにまとめて放り込んでおけばいい。
  • 夫婦の家計とは別枠にする。夫の親・妻の親それぞれに、月いくらまでなら子世帯から出してよいか、上限の目安を二人で先に決める。

なお、介護にかかった費用や同居・扶養の状況によっては、医療費控除や扶養の税制上の取り扱いがからむことがある。これらは2024〜2025年時点の一般的な制度で、要件や金額は改正で動く。適用できるかは個別事情で変わるので、最新は国税庁などの公式情報や税理士に確認してほしい。公的介護保険には所得に応じた自己負担割合や、負担を一定額で止める仕組みもある。市区町村の窓口やケアマネに早めに相談しておくと、家計の見通しはずいぶん立てやすくなる。

優先順位は「感情」でなく「緊急度」

四人の親が同時に支援を必要としたとき、誰から手をつけるか。ここで「自分の親が先」「言いにくい方は後回し」と感情で動くと、必ず角が立つ。判断軸はその時々の緊急度に置く。命や安全に関わること、放っておくと一気に悪化することを最優先し、待てるものは待たせる。当たり前のようでいて、渦中ではこの順序が真っ先にぶれる。

そこで、四人の親を同じ目線で一度棚卸ししておく。下のような表を夫婦で一枚つくっておくと、いざというときに「で、どうする」を即断できる。

確認項目夫の父夫の母妻の父妻の母
今の健康・生活の自立度
近くに頼れる人(きょうだい等)
本人の資産・年金のおおよそ
かかりつけ医・持病
住まい(持ち家/賃貸・段差等)

この一枚で輪郭が見えてくる。「実は妻の母が一人暮らしで一番リスクが高い」「夫の親は近所に弟夫婦がいて当面は安心」。優先順位は固定ではなく、状況が変われば入れ替わる。だからこそ、順位そのものより判断の基準を先に共有しておく。基準さえ揃っていれば、その場で迷わない。

親と通帳や書類を確認する手元
親と通帳や書類を確認する手元

共働きの武器は「金で時間を買う」

共働き世帯がまず考えがちなのが、介護のために仕事を減らす・辞めるという選択だ。これは止めたい。いったん離職すると収入が途絶えるだけでなく、五十代からの再就職は甘くない。生涯収入への打撃は、介護費用そのものより大きくなりがちだ。介護は数年続くことも珍しくない。走り切る前に、家計のほうが先に折れる。

世帯年収にある程度の余力がある家ほど、基本線は「金で時間を買う」——つまり外部サービスへの委託だ。迷ったら、次の三つの問いを当てればいい。

  1. これは家族でなければできないことか。本人の意思確認、看取りの場面——代えのきかないものに、限られた時間と気力を集中させる。
  2. 外部に任せられることは何か。訪問介護、配食、見守り、デイサービス、家事代行。金で解決できる領域は、ためらわず外注する。
  3. 休むなら「辞める」でなく「制度で乗り切る」。退職の前に、勤務先の介護休業・介護休暇や短時間勤務をまず確認する。制度の内容や期間は2024〜2025年時点の一般的なもので、勤務先の規定や法改正で変わる。人事や公式情報で最新を取る。

「外注は冷たい」と感じる必要はない。プロに作業を渡すからこそ、親と過ごす時間を、介護の労働ではなく対話やそばにいる時間に回せる。それはむしろ、関係を守る選択だ。住まいの段差解消や住み替えで悩むなら、住まいの簡易診断のような無料ツールで現状を整理してから動くのも手だ。

元気な今こそ「情報の共有」

四つの備えのうち、最も効果が高く、しかも今すぐタダでできるのが情報の共有だ。介護はある日突然始まる。そのとき、親の資産がどこにあるか、かかりつけ医は誰か、本人が延命や施設をどう考えているか——これが分からないと、子世帯は手探りで膨大な時間と判断力を失う。逆に、これらが手元にあれば初動はまるで違う。

親が元気なうちに、四人分について次を、さりげなく確認・記録しておく。重い話にしないコツは、「もしものとき、私たちが困らないように教えておいて」と、親を守る文脈で切り出すことだ。詰問にしない。

  • 金まわり。取引のある金融機関、年金のおおよその額、保険の加入状況、通帳と印鑑の保管場所。
  • 健康まわり。かかりつけ医、持病と服薬、緊急時の連絡先、お薬手帳の場所。
  • 本人の希望。できる限り自宅にいたいのか、施設も受け入れるのか、医療や最期についての考え。
  • 手続きの土台。判断能力が落ちた後の財産管理に不安があれば、後見や家族信託という選択肢もある。要否や手順は個別事情で大きく変わるので、必要なら専門家に相談する。

最後に一つ。夫婦で年に一度、「四人の親」について短く話す時間を持ってほしい。年末でも誕生日でもいい。状況は毎年動く。完璧な準備はいらない。互いの親を「二人で見る」という前提と、最低限の情報とルールさえ共有できていれば、同時に来ても、慌てず、もめず、どちらかが一人で抱え込まずに乗り切れる。

本記事は2024〜2025年時点の一般的な情報です。税・介護・医療・後見などの制度は改正で変わり、適用は個別事情によります。最新は公式情報や専門家にご確認ください。

同時介護が来る前に、夫婦で決めておくこと

  • 役割を「実働」と「マネジメント・金」に分け、担当する親が誰でも夫婦一つのチームで動くと合意する
  • 介護費用は親本人の口座から出し、立て替えは日付・項目・金額を専用の管理表に記録する
  • 夫の親・妻の親それぞれに、月いくらまで子世帯から出してよいか上限の目安を二人で決める
  • 四人の親を一枚の表で棚卸しし、優先順位は感情でなく緊急度で判断する基準を共有する
  • 辞める前に勤務先の介護休業・介護休暇や短時間勤務を確認し、外注を基本線に置く
  • 親が元気なうちに金・健康・本人の希望・手続きの土台を四人分さりげなく確認・記録する

よくある質問

夫の親と妻の親、両方の介護が同時期に始まったら、まず何から決めればよいですか

一般に、最初に着手すべきは「主たる連絡窓口」と「お金の出どころ」の整理とされます。どちらの親についても、誰がキーパーソンとして自治体や医療機関と連絡を取るかを決め、各々の親の年金や預貯金で賄う範囲を明確にすると、夫婦間の負担感の偏りを抑えやすくなります。判断に迷う場合は地域包括支援センターへの相談をおすすめします。

共働きで時間がない場合、仕事を辞めずに両家の介護を続ける方法はありますか

一般に、介護休業・介護休暇や勤務時間の短縮など、仕事と介護の両立を支える公的な制度が設けられています。要件や日数、給付の有無は勤務先の規定や法改正で変わりうるため、最新は勤務先の人事や公式情報・専門家へご確認ください。介護サービスを早めに組み合わせ、自分たちで抱え込まない設計が現実的とされます。

両家の介護費用は、夫婦の家計から出すべきでしょうか。それぞれの親の資産で賄うべきでしょうか

一般に、介護費用はまず本人(親)の年金や資産から支出するのが基本的な考え方とされます。子世帯が立て替える場合も、どちらの親にいくら使ったかを記録しておくと、後の相続や夫婦間の公平性の観点で役立ちます。費用負担と相続の方針は税制も関わるため、税理士やファイナンシャル・プランナーへの確認が安心です。

介護の負担が一方の配偶者に偏らないようにするには、どんな工夫がありますか

一般に、役割を「実務(通院付き添い等)」「事務(書類・お金の管理)」「精神的ケア」に分け、得意や勤務状況に応じて分担すると偏りを抑えやすいとされます。定期的に状況を共有する時間を設け、外部サービスへ委ねる範囲もあらかじめ夫婦で合意しておくことが、長期化に備える上で有効と考えられます。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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