
介護休業・介護休暇の取り方と、給付金の手続き
この記事の要点
- 介護休業は通算93日。これは「あなたが付きっきりで世話をする期間」ではなく「介護が回る仕組みを作る期間」。この勘違いが、辞めなくていい人を辞めさせる。
- 93日は最大3回に分けられる。発症直後に一気に使い切らず、入院直後・在宅か施設かの移行期・看取りの3局面に配分するのが共働き世帯の正解。
- 介護休暇(年5日、対象家族2人以上で10日)は介護休業とは完全に別枠。通院付き添いやケアマネ面談など単発の用に使え、両方を同時に持てる。
- 介護休業給付金は休業前賃金の約67%。ただし支給は休業終了後にまとめて。休業中の生活費は手元資金で持っておく必要がある——ここを見落とす人が多い。
- 本記事の数値・要件は2024〜2025年時点の一般的な制度。最新の限度額・要件は厚生労働省・ハローワーク・勤務先で必ず確認を。
介護はいつ終わるか読めない。だからこそ「辞めずに続けられる設計」が、あなた自身と世帯を守ります。
「介護のために辞める」は、たいてい早すぎる
親が脳梗塞で倒れた、認知症と診断された。介護はそういう一本の電話から始まります。仕事の段取りがつかず、上司に頭を下げ続けるのに疲れて、「いっそ辞めよう」と口にする。その気持ちはわかります。でも、ここで一つだけ言わせてください。離職は、ほぼ必ず早すぎます。
辞めれば手放すのは月々の給料だけではありません。積み上げてきたキャリア、将来の年金額、健康保険、そして「介護以外の世界」とつながっていられる接点。これらを一度に、しかも介護がいつ終わるか読めないまま放り出すことになります。一方で、両立を支える制度は育児・介護休業法と雇用保険にすでに用意されている。正社員に限らず、要件を満たせば有期契約やパート勤務でも使えます。
制度を使うときの発想を一つだけ変えてください。介護休業を「自分が介護に専念する時間」だと思うと、93日は一瞬で溶けます。そうではなく、要介護認定を取り、ケアマネジャーと体制を組み、介護サービスや家族の分担を回し始めるための“段取りの時間”。動かすのは自分の手ではなく仕組みのほう。そして仕事には戻る。この前提で組み立てると、制度の見え方がまるごと変わります。
※自治体・容体により手順や窓口名は異なります。まずはお住まいの地域包括支援センターへ。
介護休業と介護休暇は、似て非なるもの
名前が紛らわしいせいで混同されがちですが、この二つは役割がまるで違います。両方を把握しているかどうかで、打てる手の数が倍になります。
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 主な用途 | 体制づくりのまとまった休み(施設探し・入院対応など) | 短時間・単発の用(通院付き添い・手続き・ケアマネ面談) |
| 取得日数 | 対象家族1人につき通算93日まで | 1年度に5日(対象家族2人以上は10日) |
| 分割の可否 | 最大3回まで分割可 | 1日または時間単位で取得可 |
| 収入の扱い | 無給でも給付金の対象になり得る | 給付金なし(有給・無給は勤務先による) |
肝心なのは、この二つが同時に持てる別の財布だということ。施設入所の準備で介護休業を取りながら、別の月の急な通院には介護休暇を充てる。そんな組み合わせができます。介護休業の93日を使い切ったあとも、介護休暇は年度が替わればまた5日復活する。覚えておいて損はありません。
「対象家族」と「常時介護を要する状態」
制度の対象になる家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫あたりが一般的な範囲です。そして利用には、その家族が「常時介護を要する状態」であることが要ります。ここで誤解されやすいのが、これは要介護認定の有無だけで決まるものではない、という点。厚生労働省の判断基準(歩行・排泄・食事・意思の伝達といった項目)に照らして判定されるので、認定がまだ下りていなくても該当することがあります。「うちはまだ認定がないから無理」と自己判断で諦めず、勤務先や専門家に当ててみてください。
93日は「3回に割って、山場に温存」が鉄則
介護休業の通算93日を、最初から一括で取る必要はどこにもありません。むしろ共働き世帯にとって現実的なのは、介護の局面ごとに割って使うやり方です。最大3回まで分けられるという制度設計は、まさにこの使い方のためにある。
- 第1回:発症・入院の直後 ― 検査の付き添い、要介護認定の申請、ケアマネジャー選び、退院後の生活の設計。ここで土台を組みます。期間は2〜4週間で十分なことが多い。
- 第2回:在宅か施設かの移行期 ― 在宅サービスの導入、あるいは施設見学と入所手続き。生活環境がガラッと変わる山場です。
- 第3回:状態が変わったとき ― 容体の悪化や看取りの段階。再び手厚い対応が要る局面のために、ここを温存しておく。
第1回でサービスが回り始めたら、残りは“保険”として握ったまま仕事に戻る。これが、時間に余裕のない共働き世帯にとって一番崩れにくい設計です。逆に最悪なのは、発症直後の動揺のまま93日を連続で取り、後半は手持ちゼロで看取りを迎えるパターン。介護で本当に身体が要るのは、たいてい終盤です。
介護休業給付金:いくら入って、いつ入るか
休業中の収入を下から支えるのが、雇用保険の介護休業給付金です。賃金が出ない、または大きく下がる期間について、休業開始時賃金の約67%が支給されるのが基本(上限額あり)。無給の介護休業でも、これがあるだけで家計の傷はかなり浅くなります。
主な受給要件は次のとおり。いずれも一般的な目安で、細部は個別確認が前提です。
- 雇用保険の被保険者であること。
- 休業開始日前の一定期間に、所定の就労実績(賃金支払基礎日数を満たす月が一定数)があること。
- 対象家族が「常時介護を要する状態」にあること。
- 有期契約なら、契約の継続見込みなど追加要件を満たすこと。
支給額は、休業中に働いた日数や受け取った賃金によって調整されます。「休んでいる間は一切働くな」ではありませんが、働いた分はきっちり計算に反映される。そしてここが最重要——給付金は原則、休業が終わってからまとめて振り込まれます。つまり休業中の数週間〜数か月、口座には何も入ってこない期間が生じる。当面の生活費は手元資金で見ておく必要があり、ここを想定せずに突入すると、給付があるはずなのに資金繰りで詰みます。先に通帳を見て、空白期間を耐えられるか確かめてから動いてください。

申請の流れ ― 何を、いつ、誰に
給付金の申請は、原則として勤務先(事業主)を通じてハローワークへ。手続きは大きく二段階です。慌てないよう、全体像を先に頭に入れておきましょう。
- 休業を決めたら、まず人事・上司へ ― 介護休業は原則、開始予定日の2週間前までに申し出る必要があります。早く意向を伝えるほど、引き継ぎ計画も早く動き出す。
- 必要書類をそろえる ― 介護休業申出書(勤務先様式)、対象家族との続柄や状態を確認できる書類など。何が要るかは勤務先・ハローワークに早めに確認を。
- 休業を開始する ― 計画どおり取得します。途中で働く場合は日数と賃金を記録しておくと、後の手続きがスムーズ。
- 休業終了後、勤務先経由で支給申請 ― 賃金台帳や出勤簿を添えて、勤務先がハローワークへ。申請には期限があるので、復帰したらすぐ動く。
- 支給決定・振込 ― 審査を経て、指定口座に給付金が振り込まれます。
手続きを人事が代行してくれる会社もありますが、家族の状態確認の書類など、本人にしか用意できないものもあります。「会社任せ」にせず、必要書類のチェックリストを早い段階でもらっておく。これだけで後半のバタバタが消えます。
それでも辞めたくなったら、この3つを当ててから
制度を並べたところで、「もう限界だ」と感じる夜はあるでしょう。決める前に、次の3点だけ当ててください。感情ではなく事実で判断するための軸です。
- 使い切っていない制度はないか ― 介護休業93日、介護休暇、短時間勤務、時差出勤、残業(所定外労働)の免除。休業以外の両立支援も法律に並んでいます。辞める前に「働き方を変える」カードがまだ手元にあるはず。
- 介護を「自分がやる」前提にしていないか ― 要介護認定とケアプラン、デイサービスやショートステイを組めば、自分が直接動く時間は大きく削れます。まずは地域包括支援センターへ。ここに相談していないなら、辞める判断はまだ早い。
- 収入を止める“本当の”コスト ― 失う給料だけでなく、社会保険、将来の年金、そして40〜50代での再就職の難しさまで足すと、離職の代償は想像の何倍にもなります。世帯全体の家計と並べて、数字で見てください。
介護はいつ終わるか読めない。だからこそ「辞めずに続けられる設計」が、あなた自身と世帯を守ります。地域包括支援センター、勤務先の人事、必要なら社会保険労務士。使える手は遠慮なく借りて、無理のない体制を組んでください。お金と働き方の全体像を一度棚卸ししたい方は、無料診断もどうぞ。
本記事は2024〜2025年時点の一般的な制度に基づく情報であり、医療・税・法務上の個別の助言に代わるものではありません。要件や限度額は改正により変わります。最新の内容と個別のご事情は、厚生労働省・ハローワーク・勤務先、または社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
介護で辞める前に確認したいこと
- 介護休業は介護に専念する期間でなく、介護が回る仕組みを作る段取りの期間として組み立てる
- 通算93日を最大3回に分け、入院直後・在宅か施設かの移行期・看取りの3局面に配分する
- 介護休暇(年5日、対象家族2人以上で10日)を介護休業とは別枠として通院付き添いなどに充てる
- 給付金は休業終了後にまとめて振り込まれる前提で、休業中の生活費を手元資金で確保しておく
- 休業開始予定日の2週間前までに人事・上司へ申し出て、必要書類のチェックリストを早めにもらう
- 辞める前に短時間勤務や残業免除など休業以外のカードと、地域包括支援センターへの相談を当てる
よくある質問
介護休業と介護休暇は何が違うのですか
一般に介護休業は対象家族の介護のためにまとまった期間取得する制度、介護休暇は通院の付き添いなど短期間のために取得する制度とされます。日数や取得単位、賃金の扱いが異なるため、自社の就業規則と最新の公式情報をあわせてご確認ください。
介護休業給付金は誰でも受け取れますか
一般に雇用保険の被保険者で、所定の被保険者期間など一定の要件を満たす方が対象とされます。支給額や対象期間には上限がある点にご留意ください。ご自身が要件に該当するかは、勤務先や公共職業安定所など公式の窓口でご確認いただくのが確実です。
給付金の手続きは自分でする必要がありますか
一般に介護休業給付金の申請は、勤務先を通じて公共職業安定所へ行う形が多いとされます。必要書類や提出時期は勤務先により扱いが異なる場合があるため、休業の予定が決まった段階で早めに担当部署へご相談されることをお勧めします。
共働きで夫婦それぞれが取得することはできますか
一般に介護休業・介護休暇は要件を満たせば夫婦がそれぞれ取得できるとされ、対象家族ごとに日数が定められています。ご家庭の状況に応じた取得方法や給付の扱いは改正で変わることもあるため、最新は公式情報や社会保険労務士等の専門家へご確認ください。
文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)