
介護にかかるお金と使える制度、概算の考え方
この記事の要点
- 介護費用は「毎月続くお金」と「最初にドカッと出るお金」の二つに割って考える。混ぜるから怖くなる。
- 介護保険の自己負担は所得で1〜3割。親本人の年金額で割合が決まり、あなたの世帯年収は関係ない。
- 在宅は月数万円から、介護付き有料老人ホームは月30万円超まで。施設の種別で世界が変わる。
- 高額介護サービス費などの上限制度があるので、自己負担は青天井にはならない。ただし申請しないと一円も戻らない。
- 真っ先に動く先は計算機ではなく地域包括支援センター。認定が下りた瞬間、概算の精度が跳ね上がる。
介護費用は、「月いくら・最初にいくら・親本人の収入でどこまで賄えるか」の三行に分解した瞬間、輪郭が立つ。
親の介護は、たいてい予告なく始まる。深夜の入院の電話、退院後にどこでどう暮らすかの相談、そして頭に浮かぶのが「で、いくらかかるんだ」。仕事も子育ても回しているところに、金額の輪郭すら見えない不安が乗ってくる。正直に言えば、この「総額が分からない」状態こそが恐怖の正体で、金額そのものは分解すればたいして怖くない。
この記事は精密見積もりの作り方ではない。判断の土台になる概算の組み立て方を、順番どおりに渡す。これさえ握れば、ネットの「介護は2000万円かかる」みたいな脅し文句に振り回されなくなる。
まず費用を二つに割る。混ぜるな
介護のお金は性質の違う二種類が同居している。これを足し算でひとまとめにするから、桁が見えなくなって眠れなくなる。
- 毎月続く費用:介護サービスの利用料、施設の居住費・食費、おむつなどの消耗品、医療費。生きている限り出続ける。家計の固定費に乗ってくるのはこちら。
- 最初にドカッと出る費用:手すりや段差解消などの住宅改修、介護ベッド(多くはレンタルで済む)、施設の入居一時金。一回きり、けれど一発が大きい。
正しい順番はこうだ。先に「月いくら」を固める。次に「最初にいくら」を別枠で足す。この二段で見れば、毎月の家計に効くのはどっちで、貯金から一度引かれるのはどっちかが一目で分かる。総額という巨大な一つの数字と戦わないこと。これが鉄則だ。
※要介護度・所得・地域・サービス内容で大きく変わります。自己負担割合もご確認ください。
自己負担は親の年金で決まる。あなたの年収は関係ない
40歳から払い続けている介護保険のおかげで、要介護・要支援の認定が下りればサービスは原則1割負担で使える。所得が高い人は2割か3割になる。ここで共働き高所得の世帯がよく誤解する。負担割合を決めるのは介護を受ける親本人の所得と年金額であって、子であるあなたの世帯年収ではない。年金収入だけの親なら1割で収まるケースが多い。まずここで一段、肩の力が抜けるはずだ。
もう一つの肝が要介護度ごとの毎月の利用上限(区分支給限度基準額)。要支援1から要介護5まで段階があり、重いほど枠が大きい。枠の中なら1〜3割で済むが、枠を一円でも超えた分は全額自己負担に切り替わる。ここが効いてくる。
誤解しないでほしいのは「枠を使い切らないと損」ではないこと。それは月会費を取り返そうと無理に通う発想で、本末転倒だ。必要なサービスを、枠を天井として意識しながらケアマネジャーと組む。これが現実解。認定申請からケアプラン作成までの入口は、後で触れる地域包括支援センターが全部引き受ける。
在宅か施設か。ここで桁が変わる
「結局いくら」の答えは、在宅か施設か、施設ならどの種別かでまるごと変わる。一般的な目安として、点ではなく幅で頭に入れてほしい。
| 形態 | 毎月の費用感(一般的な目安) | 主な中身 |
|---|---|---|
| 在宅介護 | 数万円〜十数万円 | 訪問・通所サービスの自己負担、消耗品、医療費 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 十万円前後〜十数万円 | 介護サービス費、居住費、食費。所得に応じた軽減あり |
| 介護付き有料老人ホーム | 十数万円〜三十万円超 | 月額利用料、管理費、食費。入居一時金が別途かかる場合も |
在宅は金額こそ抑えやすい。だが家族の時間と神経という、家計簿に載らないコストが容赦なくかかる。働きながらの介護では、夜中の見守りや急な呼び出しでまず親自身か配偶者のキャリアが削れる。ここを「お金がかからないから在宅で」と軽く扱うと、後で一番高くつく。施設は月の現金支出こそ大きいが、見守りと専門ケアという重労働を外注できる。金額の安さではなく、世帯の時間と仕事をどう守るかで選ぶ。共働き高所得世帯なら、私はためらわず施設という選択肢を最初からテーブルに載せることを勧める。あなたの時給を思えば、その差額は十分に合う。
同じ種別でも地域・居室タイプ・サービス内容で金額は動く。大づかみの傾向だけ言えば、特養は費用が軽い代わりに入居待ちが長くなりがち、有料老人ホームは費用の幅が極端に広い。この二点だけ覚えておけば、施設見学で値段表を見たときに迷子にならない。
負担が膨らんだとき効く制度。ただし黙っていても一円も戻らない
自己負担が想定を超えて膨らんだとき、それを押し戻す仕組みが用意されている。柱はこの四つ。
- 高額介護サービス費:1か月の介護サービスの自己負担が所得区分ごとの上限を超えたら、超過分が後から戻る。これが自己負担を青天井にしない最大の防波堤。
- 高額医療・高額介護合算療養費:1年分の医療と介護の自己負担を合算し、世帯の上限超過分が戻る。親が入院しながら介護も受ける、医療と介護が重なる局面で効く。
- 施設利用時の負担軽減:所得や資産が一定以下なら、施設の居住費・食費を軽くできる。対象や要件は決まっている。
- 住宅改修・福祉用具の補助:手すりや段差解消などの改修、特定の福祉用具の購入に、介護保険から一定額が出る。
地雷はここだ。これらはほぼ全部が申請してはじめて受けられる。自動では一円も適用されない。知らずに放置した家庭は、戻るはずの金を毎月ドブに捨てている。何が使えるかを、認定が下りた直後にケアマネジャーと市区町村の窓口で洗い出す。この一手間が、結局いちばん効く節約になる。
では、こう概算する
手を動かす順番はこれでいい。上から順にやれば破綻しない。
- 親本人の収入を確認する:年金など、介護にあてられる親自身のお金がいくらか。介護は親のお金で親のケアをするのが大原則。ここを飛ばして子の家計から払い始めると、自分の老後資金まで巻き添えで溶ける。
- 毎月の費用を見積もる:在宅か施設か方針を仮置きし、上の表から月額の幅を出す。
- 本人収入で足りるか引き算する:月額から本人の収入を引く。残った不足分が、あなたの家計から実際に出ていく金額だ。世帯への本当の影響はこの一行に出る。
- 一時費用を別枠で足す:住宅改修や入居一時金は毎月の計算に混ぜず、貯金から一度引く額として横に置く。
- 上限制度を前提に置く:高額介護サービス費があるから自己負担に天井がある。最悪のシナリオでも青天井ではないと知っておけば、過剰に身構えずに済む。
そして最初に電話する先は、電卓でもファイナンシャルプランナーでもなく地域包括支援センターだ。要介護認定の申請、ケアマネジャーとの引き合わせ、使える制度の案内まで、入口を一手に引き受ける。費用の概算は、認定とケアプランが固まった瞬間に解像度が一気に上がる。先に動いた家庭から楽になる。
住まいやお金の段取りを家族全体で見直すなら、こちらの診断から考えを整理しておくと、いざというとき判断が速い。

最後に
介護費用は、「月いくら・最初にいくら・親本人の収入でどこまで賄えるか」の三行に分解した瞬間、輪郭が立つ。自己負担が膨らめば上限制度が支える。ただしその制度は、申請した家庭にしか届かない。漠然と恐れて夜中にスマホで「介護 いくら」と検索し続けるより、一つずつ数字に置き換えるほうが、心も家計も確実に静かになる。
なお本文の負担割合・限度額・助成額などは2024〜2025年時点の一般的な内容で、改正により変わる。実際の金額やご家庭で使える制度は、お住まいの市区町村・ケアマネジャー・公式情報で必ず最新をご確認ください。
介護費用の概算を立てるチェックリスト
- 費用を「毎月続く費用」と「最初にドカッと出る費用」の二つに分けて書き出す
- 親本人の年金など、介護にあてられる収入額をまず確認する
- 在宅か施設か方針を仮置きし、月額の幅を見積もる
- 月額から親本人の収入を引き、家計から出る不足分を出す
- 高額介護サービス費など使える上限・軽減制度を、認定後にケアマネジャーと窓口で洗い出して申請する
- 最初の電話先を地域包括支援センターにし、要介護認定の申請から動き出す
よくある質問
親の介護には、月々どのくらいのお金がかかりますか
介護の費用は、要介護度や在宅か施設かによって大きく変わります。一般に、在宅では数万円程度から、介護付き有料老人ホームなどでは月十数万円以上に及ぶこともございます。まずは要介護認定の区分と利用形態を起点に、月額と一時金を分けて概算なさることをおすすめいたします。
介護費用の負担を軽くする公的な制度には、どのようなものがありますか
公的介護保険のほか、自己負担が一定額を超えた分が戻る高額介護サービス費、医療と介護の負担を合算する制度などが一般に知られております。所得や世帯状況で適用や上限が異なり、改正もございますので、最新の要件は自治体の窓口や専門家へご確認ください。
介護にかかった費用は、確定申告で控除の対象になりますか
一定の介護サービスにかかった費用は、医療費控除の対象となる場合がございます。ただし対象となるサービスの範囲には条件があり、施設サービス費の扱いなども一律ではございません。領収書を保管のうえ、適用可否は最新の公式情報や税理士へご確認いただくのが確実です。
共働きで仕事を続けながら介護する場合、利用できる支援はありますか
一般に、介護休業や介護休暇といった仕事と介護の両立を支える制度が設けられており、要件を満たせば給付の対象となる場合もございます。期間や日数、給付の条件は改正で変わり得ますので、勤務先や公的窓口で最新の内容をご確認ください。
文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)