
住宅ローン借り換えで得する人・損する人の分かれ目
この記事の要点
- 借り換えで得するかどうかは、ほぼ「残債」「残り年数」「金利差」の三つの数字で決まる。よく聞く目安は入口でしかなく、答えは自分の数字を入れた瞬間に出る。
- 見るべきは月々の返済額ではなく、諸費用まで含めた総返済額。月3,000円安くなった、という数字に飛びつくのが一番の事故のもと。
- 諸費用は借入額の2%前後が相場。残債2,000万円なら40万円ほど。これを利息の削減で明確に上回れないなら、借り換えは見送っていい。
- 団信と健康状態は損得計算の前に来る。健康状態によっては、得かどうか以前に借り換えそのものができない。
- 本記事の数値・制度は2024〜2025年時点の一般的な内容。最新の金利・手数料・住宅ローン控除の扱いは公式情報や専門家へ。
月々の差額に惑わされず、完済までの総額で比べる。
得か損かを決めているのは、たった三つの数字
借り換えは、調べるほど分からなくなる。金利の数字だけ見れば下がるのに、諸費用の話を聞いた途端に腰が引ける。あの感覚の正体は「比べる軸が定まっていないこと」で、軸さえ決まれば判断はあっけないほど速い。
効いてくるのは次の三つだけだ。
- 残債:いま残っている元金。大きいほど、わずかな金利差が大きな金額に化ける。
- 残り年数:あと何年返すか。長いほど、削減効果が積み上がる滑走路が残っている。
- 金利差:いまの金利と、借り換え先の金利の差。
世間でよく言われるのが「残債1,000万円以上・残り10年以上・金利差0.5%以上なら検討の価値あり」。これは外してはいないが、入口の目印にすぎない。三つは掛け算で効くから、残債が3,000万円もあれば金利差0.3%でも十分プラスに振れるし、逆に残り5年を切っていれば0.7%差でも諸費用を取り返せず終わる。目安で安心せず、自分の三つの数字で確かめる。話はそこからだ。
※一般的な目安です。最新の制度・数値・個別事情は必ずご確認ください。
「月々」で比べるな。「総額」で比べろ
試算でいちばん多い事故が、比べる相手を間違えること。月々が3,000円下がる、という数字は気持ちを動かすが、それだけでは何も決められない。月々を下げるだけなら期間を延ばせばいいわけで、安くなった気分と、本当に得をしたことは別物だ。
並べるべきは、完済までに払い終わる総額。具体的にはこの二つを横に置く。
- 借り換えない場合:いまの条件のまま完済するまでに払う、残りの利息の合計。
- 借り換える場合:借り換え後に完済するまでの利息の合計 + 借り換えにかかる諸費用。
後者が前者より小さければ得、大きければ損。これだけ。ここを月々の差額で判断すると、諸費用がまるごと視界から消えて、逆の結論を出すことになる。
諸費用は、先に金額を見ておく
借り換えは要するに「ローンを組み直す」手続きだから、新規借入に近い費用が乗る。代表的な内訳は次のとおり。金融機関と借入額で幅が出るので、目安として読んでほしい。
| 費用項目 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 事務手数料 | 借り換え先に払う手数料 | 定額(数万円)か、借入額×2.2%前後のいずれか |
| 保証料 | 保証会社を使う場合に発生(不要な金融機関もある) | 借入額・期間により数十万円規模になることも |
| 抵当権の抹消・設定費用 | 登録免許税と司法書士への報酬 | あわせて数万円〜十数万円程度 |
| 印紙税 | 契約書に必要(電子契約なら不要な場合あり) | 数千円〜数万円 |
| 全額繰上返済手数料 | いまのローンを一括返済する際の手数料 | 無料〜数万円 |
ざっくり借入額の2%前後に収まることが多い、と覚えておくと見通しが立つ。残債2,000万円なら諸費用はおおむね40万円前後。借り換えで削れる利息がこの40万円をはっきり超えるか。最初の関門はここだ。超えなければ、その先を計算する意味はない。
損益分岐を確かめる5手順
ここからは、自分が得する側か損する側かを見分ける手順。計算自体は金融機関や比較サイトのシミュレーターが勝手にやってくれるが、何を入れて、出てきた数字をどう読むかを押さえておかないと、出力された数字に振り回される。
- 三つの数字を書き出す:残債、残り年数、いまの金利。毎年届く返済予定表(償還予定表)に全部載っている。手元になければ金融機関に再発行を頼める。
- 借り換えない場合の残り利息を出す:返済予定表の「利息」欄を、残りの期間ぶん合計する。シミュレーターなら三つの数字を入れれば自動で出る。これが基準線になる。
- 借り換える場合の利息を出す:借り換え先の金利で、残り年数と同じ年数(期間は延ばさないのが原則)で計算した利息の合計を出す。期間を延ばすと月々は下がるが総額は膨らむ。延ばすなら、それは別の判断として意識的にやること。
- 諸費用を足す:借り換え後の利息合計に、前章の諸費用を乗せる。これが借り換え側の本当のコストだ。
- 2と4を比べる:4が小さければ、その差が手に入る得。数万円の差なら、後で触れる手間と天秤にかける。十数万円以上の差が出るなら、前向きに動いていい。
判断の感覚をつかんでもらうために、構造を単純化した例を置く(実際の金額は条件で変わる)。
残債2,000万円・残り15年・金利差0.6%なら、利息の削減が諸費用(40万円前後)を上回り、差し引きでプラスになりやすい。一方、残り5年・金利差0.3%程度だと、削減が諸費用に届かず損へ転げ落ちる。残り年数が短いほど、同じ金利差でも分が悪くなる——ここが直感を裏切るポイントだ。

計算が「得」でも、いったん止まる4点
総額で得が出ても、それだけで判を押さない方がいい論点がある。共働きで時間がないほど、ここを先に潰しておくと無駄足を踏まずに済む。
団信の保障が入れ替わる
借り換えると、団信(団体信用生命保険)も入り直しになる。組んだ当時より年齢を重ねたぶん、保障や保険料の条件が変わることがあり、がん保障などの上乗せを付ければ金利が上がることもある。いまの団信に手厚い特約が付いているなら、それを手放してまで乗り換える価値があるかを別枠で確かめる。利息を数万円削るために、もっと価値のある保障を捨てていないか。
健康状態次第で、そもそも借り換えられない
団信は加入時に健康状態の告知がいる。持病や治療歴によっては新しい団信に入れず、借り換え自体が不成立になる。得かどうかを電卓で弾く前に、「そもそも入れるのか」を先に確認すべきケースがある。順番を間違えると、計算した時間が丸ごと無駄になる。
変動と固定の乗り換えは、損得計算の外で決める
変動から固定へ、あるいはその逆へ切り替える借り換えは、目先の金利差だけでは測れない。固定は将来の金利上昇に対する保険料のようなもので、総額が多少増えても選ぶ合理性がある。損得計算は材料の一つに留めて、「うちの家計は金利が何%上がるまで耐えられるか」という別の軸で考える。この二つを混ぜると、判断がぶれる。
住宅ローン控除への影響
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を使っている人は、借り換え後も控除が続くかを必ず確認する。一般には、借り換え後も返済期間などの要件を満たせば継続できるが、扱いは個別事情で変わる。控除の残り年数が長い人ほど影響が大きいので、ここは先に潰しておくこと。最新の取り扱いは国税庁の情報や税務署、専門家に当たるのが確実だ。
手間と時間を、コストとして見積もる
借り換えは、申込から審査・契約・登記まで含めると数週間〜1〜2か月かかる。収入を証明する書類、物件関係の書類、本人確認書類を揃え、面談や契約に時間も取られる。共働きで平日の時間が取りにくい家庭にとって、この手間そのものが立派なコストだ。
線引きの目安はこうだ。削減が数万円どまりなら、その手間に見合うかは慎重に。十数万円以上、まして数十万円の差が出るなら、書類を揃える数時間は十分に元が取れる。最近はオンライン完結で進められる金融機関も増えたから、来店不要かどうかも検討材料に入れておくといい。
まとめ:まず三つの数字を出す
得か損かは、感覚ではなく「残債・残り年数・金利差」の三つと、諸費用込みの総額比較で見極められる。月々の差額に惑わされず、完済までの総額で比べる。そのうえで、計算とは別軸で、団信・健康状態・金利タイプ・住宅ローン控除の四点を確認する。この順番なら、大きく踏み外すことはまずない。
やることは一つ。返済予定表を引っ張り出して、三つの数字を書き出す。それさえ揃えば、シミュレーターでその日のうちに損益分岐が見える。なお本記事は2024〜2025年時点の一般的な制度・慣行に基づく情報で、金利・手数料・税制は変わる。具体的な金額や控除の扱いは、金融機関や税理士・ファイナンシャルプランナーに確認してほしい。借り換えの可否や条件を整理したい人は無料診断も使える。
借り換えを判断する前の確認リスト
- 返済予定表(償還予定表)を用意し、残債・残り年数・いまの金利の三つを書き出す
- 月々の差額ではなく、諸費用込みの総返済額どうしで借り換え前後を比べる
- 諸費用(借入額の2%前後が目安)を利息の削減ではっきり上回れるかを最初に確かめる
- 団信の入り直しと健康状態の告知で、そもそも借り換えられるかを先に確認する
- 変動・固定の切り替えは損得計算とは別軸で、家計の金利上昇耐性から判断する
- 住宅ローン控除を使っている場合、借り換え後も継続できるかを公式情報や専門家に確認する
よくある質問
住宅ローンの借り換えで得しやすいのはどんな人ですか
一般に、現在の金利と借り換え後の金利の差が大きく、残りの返済期間が長く、ローン残高がまとまっている方ほど効果が出やすいとされます。逆に残高や残期間が少ない場合は、諸費用を上回る効果が出にくい傾向があります。ご自身の条件での試算は金融機関やFPへの確認をおすすめします。
借り換えにはどのような費用がかかりますか
一般に、保証料・事務手数料・登記費用(抵当権の抹消と設定)・印紙税などがかかり、合計で数十万円規模になることが多いとされます。金利差による削減効果がこれらの費用を上回るかが、得か損かの分かれ目になります。費用の内訳や金額は金融機関ごとに異なるため、最新は各社の公式情報でご確認ください。
変動金利と固定金利、借り換え時はどちらを選ぶべきですか
一概には言えず、今後の金利動向の見通しやご家庭の返済余力、リスク許容度によって適切な選択は変わります。返済額を確定させたい方は固定、当面の負担を抑えたい方は変動が向くとされますが、判断には専門的な検討が必要です。具体的な選択はFPや金融機関にご相談ください。
住宅ローン控除は借り換えても引き続き利用できますか
一般に、借り換え後も一定の要件を満たせば住宅ローン控除を引き続き受けられる場合があるとされますが、適用には条件があり、借入額や残存期間によって扱いが変わることがあります。控除の要件や限度額は改正で変わるため、最新は国税庁の公式情報や税理士へご確認ください。
文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)