住まい・ローンのイメージ

住まい・ローン

転勤で持ち家を貸す場合の手順と税金・ローンの扱い

この記事の要点

  • 最初に決めるべきは「貸したいか」ではなく「貸せるか」。住宅ローン返済中の家を金融機関に黙って貸すのは契約違反になり得る。出発点は銀行への一本の電話です。
  • 住宅ローン控除は「自分が住んでいる」ことが条件。貸している間は止まります。ただし転居前に税務署へ届出を出しておけば、戻ったとき残り期間を再開できます。動くのは「住まなくなる前」。
  • 家賃は不動産所得として確定申告が必要。固定資産税・管理費・減価償却費・ローン利息を経費にできるので、額面と手取りはかなりズレます。
  • 戻る予定があるなら、迷わず定期借家。普通借家で貸すと、転勤から帰っても入居者を簡単には出せません。
  • 本記事は2024〜2025年時点の一般的な内容です。最新の取り扱いは金融機関・税務署・専門家にご確認ください。
最初に決めるべきは「貸したいか」ではなく「貸せるか」。出発点は銀行への一本の電話です。

「売る」と「貸す」は、終わり方がまるで違う

転勤の辞令が出て、住み慣れた家を残したいと思うのは自然な感情です。ただ、売却と賃貸では背負うものが根本的に違います。売れば、引き渡したその日で関係は終わる。貸すというのは、入居者・金融機関・税務署という三者と、数年単位で付き合い続けるという決断です。感情だけで走ると、半年後に「そんな話だったのか」と固まる場面が必ず来ます。

賃貸転用には、越えないと先に進めない関門が三つあります。順番が大事です。

  • ローンの関門:住宅ローン返済中なら、貸してよいかは銀行が決めます。あなたではありません。
  • 税の関門:住宅ローン控除が止まり、代わりに家賃収入の確定申告が始まります。
  • 契約の関門:どの契約で貸すかで、戻ったとき自分が住めるかどうかが決まります。

この三つを順に潰していきます。空き家のまま維持する、親族に管理を頼む、いっそ売る。どれと比べるにせよ、貸した場合の収支と手間を先に数字にしておくこと。それが冷静さの担保になります。

賃貸と購入の累計住居コスト(概念イメージ)
累計住居コスト(イメージ・指数)0408012016005101520253035経過年数(年)おおむね19年前後で逆転賃貸(家賃が積み上がる)購入(ローン+維持費)

※金利・物件価格・家賃・住む年数で結果は大きく変わる概念図です。実際の数値は必ずご確認ください。

第一の関門:返済中の家は、あなたの一存では貸せない

ここを見落とす人が多い。住宅ローンが低金利なのは「契約者本人が住む」ことが前提だからです。返済中の物件を銀行に黙って賃貸に出せば契約違反、最悪は残額の一括返済を求められます。脅しではなく、契約書に書いてある話です。

では転勤はどうか。実務では、転勤という「やむを得ない事情」なら一時賃貸を認める金融機関が少なくありません。対応はおおむね三パターンに分かれます。

金融機関の対応内容確認しておきたいこと
住宅ローンのまま一時賃貸を承認転勤期間中に限り、住宅ローンのまま貸すことを認める承認の条件・期間・必要書類・再入居の見込み
賃貸用ローンへの借り換え投資用(賃貸用)ローンに切り替える金利が上がる。控除も受けられなくなる
原則認めない居住用前提を厳格に運用売却を含めた他の選択肢の検討

判断する前に、必ず銀行に相談する。電話のときは「辞令が出たこと」「赴任予定期間」「将来また住む意向」をひとまとめにして伝えると、話が早い。承認が出たら口頭で終わらせず、条件を書面でもらっておく。後で「言った言わない」になると、立場が弱いのはこちらです。フラット35のように転勤時の一時賃貸の取り扱いが定められた商品もあるので、自分のローンの規定は一度読んでおきましょう。

第二の関門:控除は止まり、申告が始まる

住宅ローン控除はいったん止まる

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は「自分がそこに住んでいる」ことが大前提。だから、貸して自分が住まなくなった年から原則として控除は受けられません。年末調整で当たり前に戻ってきていた金額が消えると、インパクトは小さくありません。

救済策はあります。転勤などで一時的に住まなくなり、後で戻って再び住む場合、所定の手続きを事前に済ませておけば、再入居した年以降に控除の残り期間を再開できます。ポイントは期限。手続きは転居前に税務署へ。覚え方はひとつ、「貸すと決めたら、住み始める前ではなく、住まなくなる前に動く」。順番を逆にすると間に合いません。

家賃収入は「不動産所得」

家賃が入れば不動産所得、確定申告の対象です。ここで多いのが「家賃の額面=手取り」という誤解。実際は収入から必要経費を引いた残りに課税されます。主な経費はこのあたり。

  • 固定資産税・都市計画税
  • マンションの管理費・修繕積立金(賃貸に出している期間分)
  • 火災保険料・地震保険料
  • 管理会社へ払う賃貸管理手数料
  • 建物部分の減価償却費
  • 住宅ローンのうち利息部分(元本返済分は経費にならない)
  • 入居者募集の広告費、修繕費 など

厄介なのが減価償却費とローン利息です。元本の返済は財布から現金が出ていくのに経費にならない。逆に減価償却費は現金が出ていかないのに経費になる。この二つがズレるせいで、「帳簿は黒字なのに手元は苦しい」「思ったより税金を取られた」が普通に起きます。だから貸す前に、ざっくりでいいので年間収支を一枚作る。ここを飛ばすと判断がぶれます。

本記事は一般的な情報の整理です。個別の税額や控除の可否は物件・契約・所得で変わります。実際の手続きと判断は、税務署または税理士に確認してください。
貸し出す前の住まいと契約書類
貸し出す前の住まいと契約書類

第三の関門:契約の型で「戻れるか」が決まる

案外知られていないのが、貸し方しだいで「転勤から帰ったとき自分の家に住めるか」が左右される点です。契約は大きく二つ。

普通借家契約定期借家契約
更新原則として更新される期間満了で終了(更新なし)
貸主から退去を求める正当な事由が必要で、簡単ではない期間満了で明け渡しを求めやすい
転勤から戻りたいとき入居者がいると戻りにくいあらかじめ期間を区切れる
家賃の水準比較的つけやすいやや低くなる傾向

普通借家は入居者保護がとにかく手厚い。「2年で戻るから2年で出てもらおう」と思っても、その通りにはいきません。貸主都合での退去は容易ではなく、立ち退き料の話に発展することすらある。戻る時期がある程度読めているなら、結論ははっきりしています。定期借家を選ぶ。期間を定めて満了で終わらせられるこの型が、転勤族には合っています。賃料は普通借家よりやや控えめになりますが、「確実に戻れる」という安心の対価としては安いものです。普通借家を勧めるのは、戻る確度が低く、しばらく家賃を高めに回したいケースに限られます。

貸すと決めたら:時間のない共働きでも回す段取り

共働きで時間がないなら、全部を自分で抱えないのが正解です。順番つきで整理します。

  1. 金融機関に相談する:住宅ローンのまま貸せるか、条件は何か。ここが通らなければ、他は全部白紙です。だから一番最初。
  2. 控除の手続きを確認する:再入居後に控除を再開したいなら、住まなくなる前に税務署への届出が要るかを調べる。
  3. 契約の型を決める:戻る時期の見通しから、普通借家か定期借家かを選ぶ。戻るつもりなら定期借家。
  4. 管理会社を選ぶ:募集・契約・家賃集金・トラブル対応を任せれば、遠方赴任でも手が離れます。手数料の相場と対応範囲を複数社で並べて比べる。
  5. 火災保険・管理規約を確認する:居住用から賃貸用に用途が変わると保険の内容変更が要る場合がある。分譲マンションは賃貸を制限する規約がないかも見ておく。
  6. 収支表を作る:家賃から経費・税金を引いた「実際の手取り」を出し、空き家維持や売却と並べる。
  7. 初回の確定申告に備える:貸し始めた年の収入と経費を記録。領収書と契約書はまとめて一箇所に。申告期に探し回らずに済みます。

「貸す」は、戻る場所を守りながら資産を遊ばせない、筋の通った選択になり得ます。ただし、ローン・税・契約のどれか一つでも軽く見ると、想定外の負担として跳ね返ってくる。まずは金融機関への一本の相談から、落ち着いて始めてください。貸す・売る・空き家で持つの三択を一度フラットに比べたい方は、無料診断で大枠をつかんでおくと判断の起点になります。

なお、本記事で触れた控除や経費の扱い、契約のルールは2024〜2025年時点の一般的な内容です。制度は改正されますし、個別の事情で結論も変わります。最終的な手続きは、金融機関・税務署・税理士・不動産の専門家に確認のうえ進めてください。

貸すと決める前に確認したい順番

  • まず金融機関に連絡し、住宅ローンのまま貸せるか・条件・必要書類を確認する
  • 再入居後に控除を再開したいなら、住まなくなる前に税務署への届出が要るかを調べる
  • 戻る時期の見通しから、普通借家か定期借家かを選ぶ(戻るつもりなら定期借家)
  • 家賃から経費・税金を引いた実際の手取りで収支表を作り、空き家維持や売却と並べる
  • 火災保険の用途変更と、分譲マンションの賃貸を制限する規約の有無を確認する
  • 貸し始めた年の収入・経費を記録し、領収書と契約書を一箇所にまとめる

よくある質問

転勤で持ち家を貸すと、住宅ローン控除はどうなりますか。

住宅ローン控除は本人がその住まいに居住していることが原則の要件です。賃貸に出して居住しなくなると、原則として控除は受けられなくなります。ただし転勤など一定の事由では、所定の手続きを行えば再入居後に残存期間の適用を受けられる場合があります。要件は細かいため、最新は税務署や税理士へご確認ください。

持ち家を貸して得た家賃には、どのような税金がかかりますか。

家賃収入は不動産所得として所得税・住民税の課税対象となり、原則として確定申告が必要です。固定資産税や管理費、減価償却費、修繕費などの必要経費を差し引いた利益に課税されます。給与所得と合算して税率が決まるため、一般に手取りの想定は慎重に。具体的な扱いは税理士へご確認ください。

住宅ローンを組んだ家を、そのまま賃貸に出してよいのでしょうか。

住宅ローンは本人の居住を前提とした融資のため、無断で賃貸に出すと契約違反となり、一括返済を求められる可能性があります。転勤などやむを得ない事情では、金融機関に相談すれば賃貸を認める取り扱いや、賃貸用ローンへの借り換えを案内される場合があります。まずは借入先の金融機関へご確認ください。

転勤の期間が読めない場合、貸し方はどう選べばよいですか。

再入居の予定があるなら、契約期間を定めて確実に明け渡しを受けられる定期借家契約が選択肢になります。通常の普通借家契約は借主保護が厚く、貸主の都合での解約が難しい点に留意が必要です。期間や条件の設計は影響が大きいため、不動産会社や専門家に相談のうえ判断されることをおすすめします。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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