共働き・キャリアのイメージ

共働き・キャリア

役職定年・再雇用で収入が下がる前にやる家計と資産の備え

この記事の要点

  • 収入は二段階で落ちる。役職定年(55歳前後)で手当が消え、再雇用(60歳前後)でもう一段下がる。合わせてピークの2〜5割減を見込むのが現実的。
  • 先に触るのは運用ではなく固定費。通信→保険→住宅→サブスクの順。収入が高い今やれば「我慢」ではなく「準備」で済む。
  • 住宅ローンは繰上返済が正解とは限らない。低金利・控除期間中なら、手元を残すほうが合理的なことが多い。
  • 資産は「5年以内に使う/それ以降」で割る。取り崩し局面に入る前に、近く使うお金を値動きから切り離す。
  • 年金見込み・退職金・再雇用後の手取りを一度棚卸しすれば、家計の「底」が数字になる。不安が課題に変わる。
手取りが減った後に固定費を削るのは「我慢」ですが、稼げている今やれば「準備」になります。

収入はいつ、どれくらい下がるのか

50代で待っているのは、二段階の収入ダウンです。一段目が役職定年。会社によって運用は違いますが、おおむね55歳前後で役職手当が外れ、年収がガクッと落ちます。二段目が再雇用。60歳前後で雇用形態が変わり、現役時代の半分前後まで下がるケースも珍しくありません。

下がり幅は勤務先の制度次第ですが、二段を足すとピークから2〜5割減と腹をくくっておくのが安全です。共働きなら、このタイミングが夫婦それぞれに来ます。だからまず、いつ・どちらが・どれだけ下がるのかを、紙に時系列で書き出してください。頭の中だけだと、二人分が重なる年がいつか見えません。

ここがいちばん大事なところです。収入が下がってから家計を直すのは、心理的にもきつい。手取りが減った後に固定費を削るのは「我慢」ですが、稼げている今やれば「準備」になります。同じ作業でも、着手する時期で重さがまるで違う。だから、まだ余裕のある今こそ動くべきです。

世帯収入カーブと育休・時短の谷(イメージ)
世帯収入(指数)0255075100012345678910経過年数(年)育休・時短の谷結婚出産育休復職・時短フル復帰

※キャリアや制度利用で形は大きく変わる概念図です。谷を見越した備えと復職設計が要点です。

まず固定費から。順番を間違えない

資産配分の前に、必ず先に手をつけるのは固定費です。運用で数%のリターンを取りにいくより、毎月出ていくお金を確実に止めるほうが、たいていの世帯では効くし、何より確実だから。しかも順番にコツがあります。痛みの小さいものから片付けます。

  1. 通信費。格安SIMやプランの見直しは、生活の質をほとんど落とさず削れる筆頭格。家族の回線をまとめて切り替えると効きます。ここは迷う理由がほぼないので、最初にやってしまう。
  2. 保険。子の独立が近い世帯では、大きな死亡保障の役目はほぼ終わっています。「誰のために、いくら要るのか」を引き算で点検すると、たいてい余計な保障が見つかります。
  3. 住宅費。ローンの金利タイプ、借換えの余地、賃貸なら住み替え。金額が大きいぶん、見直しの一発が効く。
  4. サブスク・会費。動画配信、ジム、惰性の会員費。一つは数百円でも、棚卸しすると合計で月一万円超えていた、はよくある話です。

固定費は一度直せば効果が続くのが利点。収入の高い今やれば、浮いた分をそのまま運用に回せて二重に効きます。逆に、ここを放置したまま運用だけ頑張るのは、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。

住宅ローンは「繰上返済」が正解とは限らない

50代でローンが残る世帯にとって、「下がる前に繰り上げて返すべきか」は最大の悩みどころです。ここははっきり言います。一律に繰上げが正解ではありません。判断軸を持って数字で比べる、それが結論です。

見るべきは、この三つ。

  • ローン金利と運用の期待リターン。金利が低いなら、無理に繰り上げるより手元を残すほうが合理的なことが多い。逆に金利が高めなら、繰上返済の「確実に減る」という効果が光ります。
  • 生活防衛資金が残るか。繰上返済で手元が痩せると、収入ダウン後の急な出費に対応できません。防衛資金を削ってまで返すのは、いちばんやってはいけない手です。
  • 完済年齢と退職金の扱い。返済が老後まで尾を引く設計なら、稼げるうちに期間を縮める意義は大きい。ただし退職金を全額返済に充てる前提は、老後資金がスカスカになるリスクと裏表です。そこは慎重に。

住宅ローン控除を受けている期間中は、繰上返済で控除のうまみが減ることもあります。控除や金利優遇の中身は改正で変わるので、実行前に金融機関や専門家で最新を確認してください。迷ったら感覚で動かず、数字を横に並べて比べる。住宅とお金の全体像を一度ならしたい方は、無料診断から始めると論点が整理できます。

資産配分は「いつ使うか」で割る

収入が下がるとは、「貯める・増やす」局面から、いずれ「取り崩す」局面へ移るということ。この移行を見越して、配分も少しずつ寄せていきます。考え方はシンプルで、お金を「いつ使うか」で三つに割るだけです。

区分使う時期の目安置き場所の考え方
生活防衛資金いつでも生活費の半年〜1年分。すぐ動かせる預貯金で確保する
近く使うお金今後5年以内教育・住宅・車など使途が決まった分。値動きの小さい形で温存
当面使わないお金5年より先老後資金など。長く置けるぶん、相対的にリスクを取れる部分

収入ダウン期に最悪なのは、値下がりしている最中に生活費のために資産を売ること。安値で取り崩すと、回復のチャンスごと手放すことになります。だから近く使うお金は、値動きの大きい資産からあらかじめ切り離しておく。これが鉄則です。

とはいえ、50代にはまだ20年、30年の時間があります。怖がって全部を安全資産に寄せると、今度はインフレでじわじわ実質価値が削られる。「守り一辺倒」も「攻め続ける」も、どちらも極端で危ない。使う時期に応じてメリハリをつける、それが落としどころです。具体的な商品や配分はご自身の状況によるので、最終的には専門家に相談してください。

収入ダウン後の「家計の底」を数字にする

不安が大きく感じるのは、下がった後の暮らしが「見えない」から。見えないものは、数字にした途端に扱える相手になります。棚卸しするのは三つ。

  • 公的年金の見込み額。ねんきん定期便やオンラインの確認サービスで、将来の目安をつかむ。夫婦それぞれの分を必ず合算してください。
  • 退職金・企業年金。勤務先の制度で、いつ・いくら・どんな形(一時金か年金か)で受け取れるか。受け取り方ひとつで税負担が変わることもあります。
  • 再雇用後の毎月の手取り見込み。可能な範囲で、給与水準を勤務先に当たっておく。

これを並べると、「収入が落ちても、最低これだけは入ってくる」という家計の底が見えてきます。底が分かれば、足りない分をいくら・いつまでに積めばいいか、という具体的な目標に変わる。漠然とした不安が、対処できる宿題になる。やることは、ただの足し算と引き算です。

年金見込みと家計を確認する手元
年金見込みと家計を確認する手元

今日から進める手順

最後に、行動に落とします。完璧を狙わず、上から一つずつ。それで十分前に進みます。

  1. 夫婦それぞれの収入が下がる時期と、おおよその下がり幅を時系列で書き出す。
  2. 通信・保険・住宅・サブスクの順に固定費を点検し、削れる分を洗い出す。
  3. ローンがあれば、繰上返済と手元温存のどちらが合うか、金利と残期間で比べる。
  4. 資産を「生活防衛・近く使う・当面使わない」に仕分け、近く使うお金の値動きを抑える。
  5. 年金・退職金・再雇用後の手取りを棚卸しし、家計の底を数字にする。

収入が下がること自体は、多くの世帯が通る当たり前の道です。怖いのは下がることではなく、何も備えないまま当日を迎えること。稼ぐ力にも判断力にも余裕がある今が、いちばん動きやすい。一つずつ整えておけば、その日は慌てて受け止めるものではなく、静かに迎えられるものになります。

税・保険・住宅・年金の内容は2024〜2025年時点の一般的なものです。限度額や税率は改正で変わり、実際の受取額や負担はご家庭の状況で異なります。最新は公式情報や税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

収入が下がる前に整える備えチェックリスト

  • 夫婦それぞれの収入が下がる時期と下がり幅を時系列で紙に書き出す
  • 固定費を通信→保険→住宅→サブスクの順に点検し、削れる分を洗い出す
  • ローンは繰上返済と手元温存を、金利と残期間で数字を並べて比べる
  • 資産を「生活防衛・近く使う・当面使わない」に仕分けする
  • 近く使うお金を値動きの大きい資産から切り離しておく
  • 年金・退職金・再雇用後の手取りを棚卸しし、家計の底を数字にする

よくある質問

役職定年や再雇用で年収はどの程度下がるのが一般的ですか

役職定年では役職手当の喪失で、再雇用では雇用形態の変更で収入が下がる傾向があり、いずれも従前の数割減となる例が多いとされます。下げ幅は企業の制度設計により大きく異なるため、ご自身の就業規則や賃金規程を早めに確認し、人事や専門家へ具体的に照会されることをおすすめします。

収入が下がる前に、家計でまず見直すべきことは何ですか

固定費の点検が起点になります。住宅ローンや保険、通信費、サブスクリプションなど毎月の支出を棚卸しし、教育費のピーク時期と収入減の時期が重なるかを家計の見取り図で確認なさると安心です。あわせて生活防衛資金として一定の現金を確保し、急な変動に備える考え方が一般に推奨されます。

再雇用後も使える公的な給付や支援はありますか

60歳以降の賃金低下に対しては雇用保険の高年齢雇用継続給付などの仕組みが知られていますが、支給率や対象、適用期間は法改正で見直される場合があります。要件を満たすかは個別事情で変わりますので、最新の内容は公共職業安定所や公式情報、社会保険労務士へご確認ください。

役職定年を見据えて資産運用はどう備えればよいですか

収入減を見越し、運用と取り崩しのバランスを整える視点が大切です。NISAやiDeCoなど税制優遇のある制度の活用が一般に検討されますが、限度額や受取方法の課税は改正で変わるため、最新は公式情報やファイナンシャルプランナーへご確認ください。退職金の受け取り方も手取りに影響する点に留意なさると安心です。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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