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老後資金はいくら必要?共働き世帯のリアルな試算手順

この記事の要点

  • 「老後2000万円」はあなたの数字ではない。ある平均モデル世帯の試算であって、共働きで夫婦二人分の厚生年金がある世帯なら、必要額はこれより小さく出ることのほうが多い。
  • 計算式はひとつだけ。(毎月の老後支出−公的年金などの定期収入)×12×老後年数+まとまった特別支出。ここに自分たちの数字を入れる。
  • 最初の一手は「ねんきんネット」で夫婦それぞれの見込み額を出すこと。推測でなく確認に変えた瞬間、不安が金額に変わる。
  • 40代でいちばん効くのは投資より「働く期間を延ばす」。次が固定費、最後にNISA・iDeCo。順番を間違えない。
  • 本記事の制度・数値は2024〜2025年時点の一般的なもの。最新は公式情報や専門家へ。
「2000万円足りるか」と心配するのは、人の家の家計を見て一喜一憂しているのと同じだ。

「2000万円」を自分の目標にするな

老後資金の話には、必ず「2000万円」が顔を出す。元をたどれば、ある公的報告書のモデル計算だ。高齢無職夫婦の平均的な収入と支出を比べると毎月数万円の赤字になり、それを約30年積み上げると約2000万円になる――それだけの話である。

問題は、この夫婦があなたではないこと。年金月20万円前後を前提にした平均世帯だ。世帯年収1000万〜2000万円の共働きは、前提からして違う。現役の生活水準が高いぶん老後支出も平均より膨らみやすいが、それ以上に効くのが夫婦二人分の厚生年金という土台だ。片働きや単身が一人分で戦うところを、あなた方は二人分で受け取る。

だから「2000万円足りるか」と心配するのは、人の家の家計を見て一喜一憂しているのと同じだ。やるべきは、自分たちの年金と支出から逆算すること。手順は単純なので、順に手を動かそう。

手取りからの世帯家計バランス(目安配分)
手取りを“割合”で配る(一例)手取り100%の配分住居28生活費25教育・こども15保険8貯蓄・投資18予備費6

※割合は一例です。住居費の重い都市部などでは配分が変わります。世帯の事情に合わせて調整を。

必要額は引き算ひとつで出る

金融の知識はいらない。次の式だけ覚えればいい。

必要貯蓄額 =(毎月の老後支出 − 毎月の年金など収入)× 12 × 老後年数 + まとまった特別支出

毎月の赤字を、老後の年数分だけ貯蓄で埋める。そこにリフォーム、車の買い替え、医療・介護といった「毎月ではないが避けにくい大きな出費」を足す。これで目標額の輪郭が出る。

論点は3つに絞られる。(1)毎月いくら使うか、(2)年金などで毎月いくら入るか、(3)何年分か。これだけだ。

手順1:年金見込みを「確認」する

まず収入の柱を、推測でなく確認する。多くの人がここを飛ばして、ネットの平均値で代用してしまう。それが不安の正体だ。

  1. 「ねんきん定期便」を見る:毎年の誕生月に届くはがき(または電子版)に、加入実績に基づく年金額が載っている。50歳以上なら、今の働き方を続けた場合の見込み額が出るので実態に近い。
  2. 「ねんきんネット」で試算する:日本年金機構のオンラインサービスに登録すれば、退職予定年齢を変えながら受給見込みを試算できる。夫婦それぞれが必ずやる。片方だけでは世帯の数字にならない。
  3. 企業年金・iDeCoも合算する:勤務先の企業年金や個人のiDeCoも老後の収入源。一時金で受け取るか年金で受け取るかで扱いが変わる点だけ押さえておく。

ここで共働きの強みがはっきり出る。夫婦ともに会社員・公務員で厚生年金に入っていれば、世帯の年金収入は片働き・単身より厚い。まずは二人分を足して「世帯の毎月の年金収入」という一つの数字に落とすこと。

手順2:老後の毎月支出を見積もる

支出をゼロから想像で組むと必ず外す。正解は「今の支出を起点に、減る項目と増える項目を足し引きする」こと。今の家計簿が、いちばん信頼できる予測のもとになる。

項目老後の傾向調整の目安
住居費(ローン)完済で大きく減る返済中なら完済時期を確認
教育費子の独立で消える独立後はほぼゼロ
食費・日用品やや減る程度現状の8割前後で見る家庭が多い
保険料見直しで減らせる保障の必要性が下がる時期
医療・介護費増える年齢とともに上振れを想定
趣味・交際・旅行過ごし方次第どう暮らしたいかで大きく変動

住宅ローンの完済と教育費の終わり。この2つは、支出が階段状にガクッと下がる節目だ。逆に医療・介護は上振れしやすいから、ここだけは少し厚めに見ておく。現役で外食やレジャーが多い家庭ほど、その水準をどこまで持ち越したいかが必要額を左右する。年4回の海外旅行を続けたいのか、それとも年1回で十分なのか。その答えが数百万円を動かす。

手順3:不足額を出してみる

手順1と2の数字がそろったら式に入れる。計算の流れをつかむための説明用の仮の数字で置いてみる(あなたの世帯とは別物だ)。

  • 老後の毎月支出:30万円
  • 世帯の毎月の年金収入:25万円
  • 毎月の不足:30 − 25 = 5万円
  • 老後年数:65歳から95歳までの30年(360か月)
  • 不足の累計:5万円 × 360か月 = 1800万円
  • 特別支出(リフォーム・車・予備費):仮に600万円
  • 必要貯蓄額の目安:約2400万円

注目すべきは、毎月の不足が1万円違うだけで最終額が360万円動くこと。だから年金見込みと支出を自分の数字で詰めることが、何より効く。退職金がある世帯は、この必要額からそのぶんを引いて考えればいい。共働きで年金が手厚ければ毎月の不足そのものが小さくなり、必要額が拍子抜けするほど低く出ることも珍しくない。先に挙げた仮の25万円が二人分で30万円になれば、毎月の不足はゼロ。話がまるで変わる。

手順4:40代の今、何から埋めるか

不足が見えたら、残りの現役期間でどう埋めるか。打ち手は3つあるが、効く順番が決まっている。多くの人がいきなり3番目から始めて遠回りする。

  1. 働く期間を延ばす(最優先):数字をいちばん大きく動かすのはこれだ。受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を使えば、ひと月あたりの年金額そのものが増える(増額率は制度で定められている)。夫婦のどちらかが65歳以降も少し働くだけで、必要額の前提が崩れる。運用で5万円増やすより、年金を月5万円増やすほうがよほど確実だ。
  2. 固定費を下げる(次点):住宅ローンの借り換え、過剰な保険の解約。一度効かせれば毎月効き続けるものから手をつける。逆に、毎日のコーヒーを我慢する系の節約はリターンが小さいので後回しでいい。
  3. 非課税制度で育てる(最後):NISAとiDeCoは、長期で積むほど時間が味方する。iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わり、掛金が全額所得控除になる。世帯年収が高く所得税・住民税の重い共働きほど、この控除の節税効果が大きい。

共働きの利点は、夫婦それぞれの非課税枠を二本使えること。ただし運用には価格変動が必ずつきまとう。当面の生活費(生活防衛資金)を現金で別に確保したうえで、無理のない額から始める。順番を守れば、40代の20年は十分に間に合う。

年金見込みを書き出す夫婦の手元
年金見込みを書き出す夫婦の手元

今週やる3つだけ

完璧な計画書より、最初の一歩のほうが価値がある。今週、これだけ進めてほしい。

  • 夫婦それぞれの年金見込みを出す:ねんきん定期便を探すか、ねんきんネットに登録し、二人分の数字を一枚に書き出す。
  • 今の毎月支出を1か月分ざっくり把握する:家計簿アプリやカード明細で十分。老後支出を見積もる起点になる。
  • 住宅ローンと教育費の「終わる年」を確認する:この2つの節目が分かるだけで、老後の支出像が一気に具体になる。

ここまで踏めば、「漠然と不安」だった老後資金は「あと何年で、毎月いくら埋めればいいか」という、管理できる課題に変わる。住まいやお金まわりを一度まるごと棚卸ししたいなら、無料診断を入り口に整理してみてもいい。

なお、本記事の年金・税・NISA・iDeCoなどの制度内容は2024〜2025年時点の一般的なもので、改正により変わる。具体的な受給額や税の取り扱い、運用判断は、必ず公式情報やファイナンシャル・プランナー、税理士などの専門家に確認してほしい。

今週から始める老後資金の逆算チェック

  • ねんきん定期便を探すか、ねんきんネットに登録し、夫婦それぞれの年金見込みを出して一枚に書き出す
  • 夫婦二人分の年金を足して「世帯の毎月の年金収入」という一つの数字にする
  • 家計簿アプリやカード明細で今の毎月支出を1か月分ざっくり把握する
  • 住宅ローンと教育費の「終わる年」を確認し、支出が下がる節目をつかむ
  • (毎月の老後支出−年金など収入)×12×老後年数+特別支出の式に自分の数字を入れて不足額を出す
  • 埋め方は「働く期間を延ばす→固定費を下げる→NISA・iDeCo」の順番で手をつける

よくある質問

老後資金は本当に2,000万円必要なのですか?

「2,000万円」は過去の金融審議会報告書に由来する一例にすぎず、すべての世帯に当てはまる金額ではございません。実際の必要額は、想定する生活水準・年金見込み額・退職時期によって大きく変動いたします。一般に、まずご自身の家計をもとに試算することが肝要です。

共働き世帯はどのように必要額を試算すればよいですか?

基本は「老後の支出見込み」から「公的年金などの収入見込み」を差し引き、不足額に老後年数を掛ける手順でございます。共働きの場合は、夫婦それぞれの年金額を個別に確認することが重要です。年金見込みは公的なシミュレーション等で把握し、詳細は専門家へのご確認をおすすめいたします。

夫婦それぞれの年金額はどこで確認できますか?

公的年金の見込み額は、毎年送付される通知や公的なオンラインの試算サービスを通じて確認できます。共働き世帯では加入歴や働き方により金額が異なるため、お二人分を個別に把握することが大切です。正確な額や受給開始時期の選択は、最新の公式情報や専門家へご確認ください。

高収入の共働き世帯でも老後資金の準備は必要ですか?

現役時の収入が高い世帯ほど、退職後の生活水準の下げ幅が大きくなりやすく、準備の重要性は変わりません。また現役時の生活費を基準にすると不足額を見誤りやすい点にも留意が必要です。一般に、早期から計画的に積み立てる意義は大きいといえます。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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